2025/07/30
バイオサイエンスコースの中村元直教授より『がん細胞の苦味受容体を起点とした抗がん剤耐性化』に関する研究発表のお知らせです。
ヒトは舌の味細胞にある苦味受容体で“苦い”と感じることで有害物の体内への侵入を阻止します。
私達は昨年、皮膚の角化細胞内に舌と同一の苦味受容体が局在し、経皮侵入した有害物を感知後、これを細胞外に排出することを発見しました(FASEB BioAdvances, 2024)。
我々は今回、がん細胞にも皮膚と同じ機構が存在し、がん細胞ではこれが抗がん剤耐性の起点になることを発見しました。
がん細胞内の苦味受容体は侵入した抗がん剤を感知して排出機構を作動させ、薬剤の細胞内蓄積を抑えていたのです。
このシステムを逆手に取れば、苦味受容体の特異的ブロッカーで抗がん剤感知を遮断すれば耐性化が回避できると私達は考えます。
抗がん剤の頻回投与による耐性化は重大な問題ですが、苦味受容体ブロッカーと抗がん剤との併用で耐性化回避を期待します。
臨床現場では様々ながん治療が行われますが、今回の発見が一助となって化学療法が新たなステージに進むことを期待します。
今回の成果は以下の国際雑誌に発表いたしました。
Scientific Reports, オンライン発表:2025/7/28
doi.org/10.1038/s41598-025-12889-5