2024/08/28
バイオサイエンスコースの中村教授から皮膚科学に関する研究報告です。
時に、苦味は有害物であることの警告になります。人は舌の味細胞にある苦味受容体が食物中の有害物を“苦味”として感知し、拒絶することで口からの侵入を防ぎます。では、私たちの生活の中で体内への有害物侵入は口からだけなのでしょうか。実は皮膚からも有害物は侵入します。中村教授らのグループはコスメ食品コースの安藤教授と共同で、皮膚の角化細胞内にも舌と同一の苦味受容体が局在し、有害物の感知、排出に重要な働きをすることを世界で初めて発見しました。皮膚が“苦い”と感じることはありませんが、皮膚から侵入しようとする有害物を最初の砦である角化細胞が細胞内に苦味受容体を配備することで感知し、細胞外に排除するシステムを作動させているのです。正に体を守るゲートキーパーです。この受容体を賦活化する(スイッチをオンにする)無害な化合物は皮膚の保護剤や抗炎症薬としての期待が高まります。
今回の研究成果は以下の国際専門誌に発表いたしました。
https://doi.org/10.1096/fba.2024-00074
皮膚は最大の臓器とも言われ、まだまだ沢山の謎に満ち溢れています。今後の研究が楽しみです。なお、本研究は東京大学大学院医学系研究科、薬学系研究科、および、京都大学大学院薬学研究科との共同研究です。