2024/08/07
医用生物学コースのマイクロ・ナノ生理学研究室では、哺乳類精子の運動観察を行っています。研究室の大学院生が、ディテクト社が発売しているソフトウェアSperm Motility Analysis System (SMAS)を使って、ヒト精子の運動速度を解析しています(写真1と2)。顕微鏡で精子運動性を計測する本方法は、様々な生物の精液の評価に用いられています。
(写真1)SMASの外観
(写真2)大学院生が実験している様子
顕微鏡で観察した運動精子の1秒間の動画を撮影し、明るい頭部を追尾した像(図1)を解析すると、いくつかの運動指標数値が得られます。その定義をこちらの図(図2)に示します。今回は、得られた運動指標数値の関係を調べるために、散布図行列(図3)と相関係数行列(図4)とそのヒートマップ(図5)を出してみました。ソフトはRコマンダーとMicrosoft Excelを使用しました。Rコマンダーは統計解析ソフトウェアRの機能の一部をメニューから選ぶ形で処理できる無料配布されているソフトウェアです。Rコマンダーの画面を図6に示します。SMASの解析結果から得られた運動指標数値がExcelファイルに書かれています。その数値行列をRコマンダーに取り込んで、運動指標数値を決めると図3の散布図行列が出来上がります。同様に、図4の相関係数行列が計算されます。これをエクセルに貼り付けて、条件付き書式にすれば、図5のように相関行列のヒートマップが出来上がります。相関の高い場合、直進性は直進速度の関数であるケースもあります。曲線速度と頭部振幅間の相関係数が0.93でありますが、互いに独立なパラメータです。これは、精子の運動性が高い場合には曲線速度と頭部振幅が両方上昇することが示唆されます。
(図1)追尾像
(図2)運動パラメータの定義図
(図3)散布図行列
(図4)散布図相関行列
(図5)相関係数行列
(図6)Rコマンダー画面の一例