2024/07/19
生物科学科3年次生からは,生物生産実験,環境科学実験,コスメ・食品実験,医用生物実験,水産生物学実習の,5つの実験実習科目が開講されます。
春1学期には,生物生産実験が実施されました。今回は,矢野先生が担当されている実験の一部を紹介します。
微生物を用いる実験の一つとして,機能性物質を生成する乳酸菌を探索する実験を実施しました。
本実験は,微生物資源を活用して,医薬品や食品の開発に利用できる有用微生物を選抜する方法論を学ぶことを目的としています。
自然界から分離された多様な乳酸菌を試験管で培養し,培養後の様子を観察しました(写真1)。
候補菌株の中から目的の機能性物質を発酵生産する乳酸菌を特定するために,各乳酸菌培養液のサンプルを用いて薄層クロマトグラフィー(TLC)による化合物(生体物質)の分離と生成物の確認を行いました。このTLC分析ではアミノ酸の呈色反応を利用しており,ニンヒドリン溶液をスプレーした後にホットプレートで加熱することで徐々に反応が進行し,化合物のスポット(しみのようなもの)が鮮やかな色で見えるようになります(写真2)。学生たちはスポットが少しずつ見えてくる過程を楽しみながら観察していました。
TLCの結果を目視で確認しています(写真3)。TLC上で新たなスポットの生成の有無を確認することで,機能性物質を生成する乳酸菌を選抜できたかどうか(目的が達成できたか)を考察して実験レポートにまとめます。
(写真1)乳酸菌の培養
(写真2)ホットプレートによる加熱
(写真3)TLCの結果
生物生産実験では,生物が生産する有用な生体物質の性質や,生物の生理機能に関する基礎知識と実験技術を学ぶことができます。実習を通して,微生物による発酵生産,酵素・生物生産物の高付加価値化,生体からの抽出・精製と分析や植物の生理応答などの基本的な実験技術とその理論を身につけます。発酵生産による有用物質の生産,植物からの有用成分の精製・分析や生理機能の解析に関する技術の実践的な習得を目指します。