2022/12/21
植物の栽培や育種を学ぶための事前学習として、自分の手で植物を育て観察することは大切である。そこで好きな植物を植え、多様な環境を生み出せる研究機器を用いた長時間のタイムラプス観察を行う研究室体験プログラムを企画した。 企画に応募した4名の参加者は用意された種子の中からネギ、カブ、ほうれん草、トマト、バジルなどの種子を選び、インキュベータ内で生育状況をタイムラプスカメラで観察した。植物の胚軸が回転する回旋運動や葉の開閉運動が見られた。その中でも特に学生達はトマトの葉の開閉運動に興味を示した。インキュベーターの設定は16時間・8時間の明・暗条件であったが、発芽6日目のトマトの葉は明るくなった直後から葉が開き始め、6時間かけて完全に開いた状態になった。この葉は4時間開き続け、その後、6時間かけて完全に閉じるという運動をみせた。暗くなるタイミングで完全に葉が閉じるように、前もって葉の閉じる運動が始まったようにみえた。また発芽13日目のトマトの葉でも葉の開閉にかかる時間は3時間・4時間と短くなったが、同様に暗くなる時間が分かっているように葉を閉じた。 この結果を受け、この運動が環境依存的に起きている現象なのか、遺伝的にプログラムされた現象なのかを明らかにするため、学生達にインキュベーターの設定時間を変えて実験を行うことを提案し、学生達は12時間毎の明・暗条件でタイムラプス観察を行った。その結果、葉が閉じるのに必要な時間は短くなり、葉の閉じ始める時間は環境依存的に決まっているように思えた。 この結果を受け、さらなる実験として学生から24時間明条件下で観察を行いたいという提案があり、実験を行った。その結果、24時間明条件下では葉が開くだけで33時間かかり、葉の開閉運動そのものが異常になることが示された。 今回の研究室体験では実験回数が少なかったため、結論を得るには至っていないが、「教科書に書いていないことを自分で調べる」という大学で必要とされる学びの発端に触れることができたのではないかと思う。今回の研究室体験により、今後の大学での学びが更に充実したものになることを期待している。